研究内容

<加速器> 大強度の負イオン加速を実現し、 物理學、医学、薬学、工学の研究開発に資するとともに、 国際共同研究を展開します。

<原子核> 陽子と中性子という二種類の核子から構成される原子核は、 様々な量子多体系の特徴が現れる自己束縛の系であり、 現在でも多くの謎が残され、数多くの研究者がその性質の解明を目指して研究しています。 本研究部では、原子核に現れる多様な状態の起源とその性質の解明を目指して研究を 行なっています。具体的には以下のような研究テーマについて、東北大学RARISサイクロトロン加速器施設 および大阪大学核物理研究センター(RCNP)、理化学研究所RIビームファクトリー(RIBF)等において 実験研究を行なっています。

AVFサイクロトロン加速器

-DATE(Deuteron Accelerator for Theranostics mEdicine at Tohoku University) Project-

RARIS(青葉山)では、負イオン源と930型AVFサイクロトロンの組み合わせにより負イオンの加速が行えます。 加速した負イオンを最終的に正イオンに変換して取り出す事で、通常の正イオン加速よりも大強度化が 期待されています。 我々は、この負イオン加速による大強度イオンビームの開発を行っています。




多種多様なイオンを加速するためのイオン源の開発

RARIS(青葉山)では、3台のECRイオン源と2台の負イオン源があります。 ECRイオン源を用いて水素からキセノンまでの多種多様な正イオンビームを 高品質で供給できるよう開発を行っています。


アルファ凝縮状態の探索

原子核の新しい励起モードであるα粒子凝縮状態の探索を行っています。
α粒子(ヘリウム4の原子核)はフェルミ粒子である陽子2個と中性子2個から構成されるボーズ粒子であり、 原子核においてひとつの量子状態に凝縮(ボーズ・アインシュタイン凝縮:BEC)する状態が存在すると 予想されています。
空間的にも局所的に凝縮する原子のBECとは異なり、 α粒子の場合は空間的に接近すると核力の斥力をうけるため、広がった分布をすると考えられています。 そのような新しい原子核の励起状態を、重イオンビームを用いて生成し、その崩壊過程を精密に測定することで、 α粒子凝縮状態の存在を確立しその性質を調べます。
詳細はこちら。

Alpha cluster states and the decay

関連するトピックス解説:
”Candidate for the 2+ excited Hoyle state at Ex~10 MeV in 12C”
M. Itoh et al., Phys.Rev.C84(2011)054308 (アメリカ物理学会誌のViewpointsに選ばれました)

supported by
科研費:基盤研究B(2020)M. Itoh
科研費:若手研究B(2012)M. Itoh
科研費:若手研究B(2007)M. Itoh




零度を含む超前方アルファ非弾性散乱測定と核物質の状態方程式

原子核の巨大共鳴の測定から原子核の圧縮率を求める研究をしています。
核物質の状態方程式は超新星爆発など高密度下における研究において重要な役割りを担います。 その状態方程式を記述する上で重要な量の一つに核物質の非圧縮率というものがあります。 これは飽和密度での原子核の核子当たりのエネルギーの曲率に関ずる情報を与えてくれます。 分かり易く言うと外から圧力をかけた時にどのくらい圧縮されにくいかを表す量です。
原子核の非圧縮率を実験的に求める方法の一つとして巨大共鳴の測定があります。 特にアイソスカラー型(陽子と中性子が同位相で振動するモード)の巨大単極共鳴(GMR)と巨大双極共鳴(ISGDR)の測定が適しています。 これらは、4Heビームを原子核に照射し、零度方向に散乱したアルファ粒子を測定する事で観測する事が出来ます。 しかし零度方向には散乱アルファ粒子とは比べものにならないくらいの数のビームも飛んでくる為、 その実験は大変困難なものでした。 我々はRCNPにてこの実験的困難を克服し、 208Pbの巨大単極共鳴と双極共鳴の測定から核物質の非圧縮率を215 MeV付近と求める事に成功しました。 今後は同位体間の系統的な測定や不安定核に対する測定を行う予定です。

Collective motions

GMR ISGDR

関連するトピックス解説:
"原子核の圧縮率と巨大共鳴"
伊藤正俊、坂口治隆、内田誠、日本物理学会誌2006年3月号165ページ




超変形状態の探索

基底状態ではほぼ丸い形をしている原子核も励起状態では様々な形に変化する事が知られている。 我々はその一つである原子核がラグビーボールのように変形した超変形状態の測定を通し、 極限量子状態の生成・消滅機構を解明すべく研究を行っている。