実験概要
原子核におけるα凝縮状態は、原子核中において核子に働くパウリの排他原理のために、 原子核が大きく拡がった状態であると考えられています。 このため、16Oの4α凝縮状態の波動関数と 12Cの3α凝縮状態とα粒子の波動関数の重なりが大きいことが予想されます。 つまり、16Oのα凝縮状態が4α崩壊しきい値以上に存在すれば、 α凝縮状態からのα崩壊を測定し、12Cのα凝縮状態 (=第二0+状態) + α 崩壊チャンネルの分岐比が他のチャンネルに比べ大きいことを示すことが できれば、α凝縮の存在を示したと考えられるのです。 また、16Oのα凝縮状態は、Ikedaダイヤグラム から、 4α崩壊しきい値付近に存在すると予想できるため、α粒子などの軽イオンを 入射プローブとして用いた実験では、 16Oのα凝縮状態が崩壊し、そこから放出されるα粒子の運動エネルギーが 数百keVと小さくなり、散乱実験を行うことは非常に難しいと思われます。 そこでこの実験では、調査対象となる酸素原子核を加速し、運動エネルギーを 持たせることによって、酸素原子核が崩壊して放出されるα粒子の運動エネルギー を大きくし、半導体検出器等で測定することを容易にする工夫がなされています。
CYRIC930サイクロトロン および 41 course
CYRIC K=130サイクロトロン (通称930サイクロトロン)を用いて 16O5+イオンを160 MeVまで加速し、 41コースにある大型散乱槽内において、炭素標的と反応させます。